「長嶋さん復帰の日」
実況を始めて声が上ずってるなと感じていた。
やや早口になって不必要にテンションがあがっている。
僕の実況におけるこれはまずい状況で
たいていこういうときは聴いている人の心と
「シンクロ」しない「独りよがり」の
放送をやっていることがおおい
わかってはいるのだが自分で自分が
コントロールできない戸惑いも感じていた。
長嶋さんが左手だけで手を振っている。
ただそれだけで実況しながらいつもとは違う
興奮状態に置かれている自分を感じていた。
長嶋茂雄 巨人軍終身名誉監督が脳梗塞で倒れてから
488日ぶりに東京ドームの巨人ー広島戦に姿をみせた。
この日が復帰の日に選ばれたのは テレビ 新聞をはじめとするメディア
その周囲の「大人」達の様々な思惑があったことは事実で
こんな仕事をしていると知らなくていいようなことまで
耳にはいってきてしまうものだ。
しかしそんなことをはるかに超えて
長嶋さんの姿が東京ドームの大画面に映されたとき
なんだか胸がジーンとしてしまったのは 正直自分でも驚いている。
8年前だと記憶しているが まだ監督時代の長嶋さんを「囲む会」に
参加させてもらったことがあった。
僕はアナウンサーになってちょうど10年目でリーグ優勝シリーズ優勝を含め
3回のいわゆる「優勝実況」の経験があったがいずれもそれは西武 オリックスの
優勝シーンで 巨人の優勝は実況した経験がなかった。
その席でこの話をして 「是非今度は巨人の優勝を実況させてください」と
長嶋さんにいったら
「10年で3回の優勝実況ですか ということはあなた3割バッターですねえ
こりゃすばらしい!」なんて言葉をいただいて大変感激した経験がある。
実現したのは2000年日本シリーズいわゆるON対決で
長嶋さんの胴上げを実況できたのは幸運以外のなにものでもなかった。
世間では「北京五輪にむけて」などと言う人もいるが
そんなことはもういいでしょう。
もっともっと回復してもらって いつまでも野球界のヒーローで
いてほしいとこころから思わずにはいられない。


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